2015年3月10日火曜日

「これでいいのか、日本のがん医療」

シカゴ大学内科・外科教授 中村祐輔氏 特別講演
於:東京大学医科学研究所 (2015/2/18)

A:画期的な新薬が生まれにくい土壌
 近年、政府によって「ドラッグ・ラグ解消策」が行われてきたが、
 恩恵を受けたのは海外の製薬企業。 
 国内での創薬を促し、もっと国際競争力を付ける施策に力を入れるべき。

B:「標準治療」という名の「マニュアル療法」
 病気を見て患者を診ない「マニュアル医療」が横行しているが、
 エビデンスの重視とは「標準治療」の枠にとらわれることではない。
 患者によって望む治療や、終末の迎え方が異なるのは当然であり、
 臨機応変により添う姿勢が必要だが、実際はガイドラインに書かれていない段階になると、
 自分の責任は終わったと勘違いする医者が多い。

C:癌免疫療法急進展への対応
 癌免疫療法では、体内で癌細胞を守ろうとする免疫系統を抗体で無力化することが肝要。
 抗体薬による臨床効果は癌細胞での遺伝子変異が多いほど強まり、
 変異の数と治療効果が有意に比例する。
 しかし、効果を適切に見極めるには時間を要する。

D:致命的に遅れた「医療のオーダーメイド化」
 遺伝子変異別の診断や投薬を行うゲノム医療には薬剤の効率利用や副作用回避、
 無駄な医療を省くなど大きなインパクトがある。
 仏国では既に、遺伝子検査を受けなければ特定の治療薬が使えないという施策が採られ、
 米国や韓国では10万円台で遺伝子を解析する機器の導入が相次いでいる。
 日本でも早急にゲノム医療の重要性を意識した国策を進めねばならないが、
 現段階では欧米に比べてはるかに遅れている。