2013年7月8日月曜日

去勢抵抗性前立腺がんのホルモン療法

薬物的去勢を行う上で、ベースとなるのは、これまではLH-RHアゴニスト(リュープリンorゾラデックス)でしたが、現在は、これに加えて新薬ゴナックスが用いられるようになりました。
効果のほどはこのゴナックスのほうが優れている(特に初期のPSA効果が著しい)という報告もありますが、アゴニストに抵抗性を示した場合、ゴナックス(アンタゴニスト)に代えてみて効果があるかどうかは良く判っていないのが現状のようです。
しかし作用機順は少し異なるので、トライしてみる手はあるかも知れません。


これらと並行して抗男性ホルモン薬が用いられることが多いのですが、カソデックスから始まって、効果がなくなるたびに、オダイン、プロスタールと薬の種類を変えることが多いようです。

(→交替療法)
抗男性ホルモン薬を中止すると、PSAが下がる場合もあります。
(→アンチアンドロゲン除去症候群)


以下の順序は必ずしも決まっているわけではありませんが、これらの薬剤が次々と用いられることが多いと思われます。

・エストラサイト(抗がん剤:ナイトロジェンマスタードと女性ホルモン:エストラジオールの複合薬)
・プロセキソール(女性ホルモン剤)
・タキソテール(抗がん剤、プレドニンと併用で用いることが多い)
・デキサメタゾン(ステロイド)

これらと並行して考えなければならないのが、骨転移への対処です。

これまで多かったのはゾメタですが、近頃はランマークが使われることも増えてきました。
転移個所がすくなければ、放射線治療(外部照射)が有効ですが、多発転移に対しては、メタストロン注(ストロンチウム89)が用いられる場合もあります。
(参考:メタストロン注実施医療機関 http://www.nmp.co.jp/CGI/public/meta/top.cgi)

ここまで全て手をつくしてしまった場合は、新薬の臨床試験を受けるという手も考えられないことはありません。

海外ですでに承認済みであり、日本で治験が行われている薬がいくつかあります。
新規の抗アンドロゲン剤であるエンザルタミド(MDV3100)は、すでに治験を終了し、2013年5月、厚労省に対し承認申請が出されています。
アビラテロン、TAK700などの男性ホルモン阻害剤や、新規抗がん剤であるカバジタキセルで、現在治験が進められています。
これらの薬剤の治験にあったては、泌尿器科学会でも臨床研究推薦文を出して後押しをしてくれています。
シプロイセル-T(プロベンジ)という免疫系の薬も海外では承認済みですが、一部に薬効を疑問視する声もあったり、高額(900万)なこともあり、我国では、積極的に承認を求める声は多くなく、実際にそうした動きも鈍いようですね。

ただ、どこでこうした臨床試験が受けられるということはなかなか難しく、がん情報サービスにも一応関連リンク先情報はあるのですが、患者の閲覧に対する配慮がかけており、なかなかこれらのリンク先を辿るのは大変でしょう。

http://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct03.html
どこかでこうした治験を受けることができないか、主治医に相談を持ちかけるのが手っとり早いかもしれません。
エンザルタミドはおそらくここ1年の間に承認されるだろうと思われます。
前評判の良い薬なので、この薬の承認まで、色々とあの手この手でつないでいければ良いのですが。
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補記:エンザルタミドとアビラテロンは2014年に承認されました。TAK700は開発を断念。
   カバジタキセル(抗がん剤)もドセタキセル(タキソテール)後の薬として承認されています。