2011年6月6日月曜日

全摘除術と監視(待機)療法の比較

参考サイト:がんナビ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201105/519863.html

なんらかの症状がある早期(限局がん)前立腺癌患者を、
「手術(全摘除術)」と「待機療法」に割り振り、12.8年(中央値)追跡した
ランダム化臨床試験「SPCG-4(Scandinavian Prostate Cancer Group Study 4)」の結果が、
New England Journal of Medicine誌の2011年5月5日号に掲載された。

観察期間:1989年10月~99年2月
地域:スウェーデン、フィンランド、アイスランドの14施設
対象年齢:75歳未満
病期:ステージT2までの限局がん
高分化または中分化がん
PSA値は50ng/mL未満
計695人(平均年齢65歳)

A)手術(347人)
 (根治的切除:294人、局所再発や転移の徴候が見られた場合のみホルモン療法)
・前立腺癌死亡率は14.6%

B)待機療法(348人)に無作為に割り付けた。
 (無治療:302人、排尿障害にはTURT、進行or骨転移が生じた場合にはホルモン療法)
・前立腺癌死亡率は20.7%

つまり前立腺癌死亡率の比較では経過観察より手術の方が有利とのこと。
これをさらに、65歳未満と65歳以上に分けて分析した結果、65歳未満では有意差が見られたが、65歳以上では有意差が見られなかった。

ただし、この試験に登録された患者のほとんどが触知できる腫瘍を有しており、
PSA値の上昇をきっかけに診断に至った患者は5%にとどまることから、
この試験で得られた結果は、PSA値を指標とするスクリーニングで前立腺癌と診断された患者群にそのまま当てはめることは難しいと考えられる。

■補足
PIVOTと呼ばれる米国の大規模ランダム化臨床試験の結果が、2011年5月17日に
American Urological Association (AUA=米国泌尿器科学会)の年次総会で発表されました。
詳細な内容はまだ入手できておりませんが、概要は次の通りです。
追跡調査12年目の時点で、外科手術群と待機療法群の全生存率および前立腺癌特異的生存率は、ほぼ同等であったと言う。
このPIVOT試験では大多数の参加者がPSA検診により前立腺癌と診断された患者であることから、こちらの臨床試験の結果のほうが現在の米国の実情をより正確に反映していると考えられます。
日本においても、PSA値から前立腺がんが見つかることが増えているので、実情は米国と大差はないでしょう。
監視(待機)療法の適応にあたって、NCCNの"very low risk"に準じるなどの配慮があれば、「手術と同等」がより確かなものになりそうです。
副作用を含めて考えるなら、圧倒的に監視(待機)療法が優位となりそうですね。