2010年1月25日月曜日

前立腺癌対象にCabazitaxelの米国での段階的申請が開始

日経メディカルオンライン(2010-1-12)
 フランスSanofi aventis社は、このほど前立腺癌の第2選択薬としてタキサン系抗癌剤であるCabazitaxel (XRP-6258)の段階的承認申請を米国で既に開始していることを明らかにした。
Cabazitaxelは、米食品医薬品局(FDA)から段階的申請が可能になるファーストトラック審査の対象として認められていた。 Cabazitaxelは、フェーズ3臨床試験であるTROPIC試験で前立腺癌に対して、全生存率について統計学的に有意に優れることが示されたという。TROPIC試験の詳細は、3月にサンフランシスコで開催されるGenitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)で発表される予定。
Cabazitaxelのわが国における開発については、現在評価中だという。

2010年1月20日水曜日

重度尿失禁の治療法

詳細は下記サイトを参照

がんナビ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201001/100434.html

東北大泌尿器科教授の荒井陽一氏によれば
「男性の重度尿失禁治療のゴールドスタンダードは人工尿道括約筋の埋め込み術。
 海外では教科書にすら書かれているのに、日本では普及が遅れている。」

中~重度の尿失禁の原因としては、前立腺の全摘術が過半数を占め59%、
続いて神経因性膀胱が23%、前立腺肥大症手術が1割程度を占めていた。
前立腺がんの全摘術は年間約2万件が行われ、ほぼ全員に一時的な尿失禁が生じ、
そのうち1~3%程度に体操や薬物療法では治りきらない尿失禁が生じてしまう。

このような患者にの残された唯一と言っても良い治療法が人工尿道括約筋の埋め込み術。
ただし、この治療が可能な医療機関は限られている。

2010年1月18日月曜日

限局性前立腺癌の管理における前立腺全摘術と強度変調放射線治療の比較

PubMed 論文抄録 (海外癌医療情報: 2009-10-18)

大学医学部放射線治療学科(米国)背景と目的:限局性前立腺癌において、前立腺全摘術 (RP)または適応例にはホルモン療法を併用した72Gy以上照射の強度変調放射線治療(IMRT)により、生化学的無病生存率(BDFS)が改善するかどうかを検討した。

対象と方法:1997年から2005年に2箇所の専門医療センターでRP(204名)またはIMRT(352名)を受けた患者556例の連続標本について解析した。臨床病期、グリーソンスコア、治療前の前立腺特異抗原(PSA)に基づき、患者を予後グループに層別化した。アウトカム指標はBDFSとした。

結果:ベースラインでの病変の進展度は、IMRT例のほうが高かった(p<.001)。RPとIMRTの5年BDFSの差異は、予後良好群(92.8% vs. 85.3%, p=.20)、中間的予後群(86.7% vs. 82.2%, p=.46)では認められなかった。予後不良群においてはホルモン療法併用IMRTのほうがBDFS成績は良好であった(38.4% vs. 62.2%, p<.001)。全コホートにおいて交絡因子で補正したところ、グリーソンスコア(p<.001)と臨床病期(p<.001)からBDFSが予測されたが、治療法からはBDFSは予測されなかった(p=.06)。予後不良群では、治療法からBDFSが予測された(p=.006)。結論:RPとIMRTのBDFSは、予後良好群や中間的予後群については同程度である。予後不良群では、ホルモン療法を併用した72Gy以上照射のIMRT例のほうがBDFSは高いことを示している。PMID:19800702

平 栄(放射線腫瘍科) 訳

乳癌の遺伝子検査(Oncotype DX)

(日経メディカル記事 2010. 1. 14)

 タモキシフェンによるホルモン療法を受けた早期乳癌患者について、再発リスクと化学療法から得られるベネフィットを21種類の遺伝子から予測する遺伝子検査「Oncotype DX」は、術後補助療法を決定するうえで医師と患者に大きな影響を与えることが分かった。
米Loyola大学Health System MedicalのShelly S. Lo氏らによる試験の結果が、1月11日のJournal of Clinical Oncologyのオンライン版に掲載された。 

 Oncotype DXは米Genomic Health社が開発した検査で、切除した乳癌組織を検体として21種類の遺伝子の発現量を測定し、再発スコアを計算する。再発スコアは0~100で表し、値の高低で再発リスクの高さを予測する。スコアが低い女性に化学療法は推奨されない。
 2004年に米国でOncotype DXが商業化されてから、この検査を受けた乳癌患者は12万人を超える。検査の対象となるのはエストロゲン受容体陽性でリンパ節転移がない早期乳癌患者だ。毎年約10万人が、このタイプの乳癌と診断されている。

 今回の試験の対象はOncotype DXを受けた89人の乳癌患者。Loyola大学など4施設の医師17人が治療を担当した。
 医師らは28人の患者(31.5%)について治療の決定を変更した。このうち20人(22.5%)の患者の検査実施前の推奨治療は化学療法とホルモン療法の併用だったが、検査後にはホルモン療法単独に変更した。さらに患者24人(27%)が治療に対する決定を変え、うち9人は化学療法とホルモン療法の併用から化学療法をはずすことを希望した。

 「今回の結果から、この遺伝子検査が医師と患者による治療の決定に同時に影響を与えることが初めて示された」とLo氏は話した。 医師らは、この検査により患者68人(76%)において推奨した治療への信頼度が高まったと話した。
 一方、検査結果を受け取った患者は、自分たちが治療について決定したことへの葛藤と、自分たちが置かれた状況への不安が顕著に減少したと報告した。

 検査費用は日本円で約36万円かかるが、研究者らはこの検査により化学療法の支出を回避できる患者を選別でき、全体の費用削減につながる可能性があると説明している。

(森下 紀代美=医学ライター)

2010年1月11日月曜日

MDV3100

MDV3100は第二世代の経口抗アンドロゲン剤で、ビカルタミド(カソデックス)よりも優れた抑制作用を示し、ビカルタミド抵抗性癌にも効果が見られるという。現在、ドセタキセル(タキソテール)の治療歴を有するホルモン非感受性前立腺癌患者を対象とした、国際第Ⅲ相臨床試験が行われている。2009/10/28、アステラス製薬は米Medivation社とMDV3100の開発・商業化に関する契約を締結し、国内における開発ならびに臨床試験を検討中。

前立腺がん:ステージD1

(ひげの父さんの掲示板書込み:2010-1-10)
かなり進行した前立腺がんでも、ホルモン療法で共存をはかることもできれば、かなりの高齢者であれば、無治療のまま天寿をまっとうできることも珍しくはないのですが、比較的若い人の場合は、いつかホルモン療法に耐性が生じる日を恐れながら暮すよりは、「治せるものなら治してしまいたい」と思うほうが普通じゃないでしょうか。

こうした場合、治療法の選択しだいでその運命が大きく分かれるのは、5~6年前はステージCだったと思うのですが、今やそれがステージD1に移りつつあると感じています。ただし、ステージD1に対しては、ほとんど全ての泌尿器科医はホルモン療法を勧めるでしょうし、放射線治療医でもまだD1に対する積極的治療には否定的な見解のほうが多いはずです。

EBMに基づくデータが出そろうには、経過観察も含めれば5~6年はかかってしまうのが当たり前です。ガイドラインというのは、そうした時間を経て作成されるわけですし、それと同時に、特定の医療施設、特定の医師だけしかできない治療法じゃなく、多くの医療施設でも実施(再現)可能な治療法というのが重視されてもいるわけです。また、書かれていないことや、決められていない事項も当然たくさんあるわけです。

新しい治療法よりも標準治療を第一と考え、これに逸脱することや極端に遅れた治療法に警鐘をならすことは、格差是正や均てん化を図るという意味では非常に大事なことですが、ガイドラインに書かれていないやり方でも、治る可能性がわずかでもあるものなら、それに賭けてみようと思うのも、これまた当然でしょうし、そういうことも必要な自己決定の一つだと思うわけです。

海外では、こうした治療法も、治験(clinical trial)という形で、患者の選択肢として提供されているわけですが、日本では残念ながら、こうした情報は待っていても与えてもらうことはまずできません。なんとかしたいと思うなら、ガイドラインというのは法律ではありませんから、そうした道がまったく閉ざされているわけではありません。

開いている門はあるはずですが、そこまでの道案内がほとんどないのが実情です。むしろ、始めからそうした道案内をしてくれる医師に出合うことは稀だと思って、ここぞと思う医師や医療施設を、積極的に自分から訪ねていく姿勢が必要ではないでしょうか。
たとえそれがセカンドオピニオンであれ、サードオピニオンであったとしても。
始めからホルモン療法で良いということであれば、なにもこうした努力をする必要はないわけですから、それも含めて、自己決定が大事ということになるでしょうね。

2010年1月7日木曜日

がんペプチドワクチン療法

市民のためのがん治療の会「がん医療の今 No.12」より、
http://www.com-info.org/ima/ima_20091202_nakamura.html
東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター長 中村 祐輔 教授
(以下はその要約です。一部表現が原文と異なる部分もありますので、詳しくは上記サイトをご覧ください)

がんの免疫療法は期待されつつも、そのエビデンスが必ずしも十分でない状況が長く続いていましたが、ようやく、外科療法、化学療法、放射線療法に続く第4の治療法として、ワクチン免疫療法が科学的に実証可能な治療法として認識されつつあります。

  外科療法や放射線療法は、限局がんには有効な治療法ですが、転移・再発がん、あるいは、手術やその他の治療を受けたが目には見えないレベルで全身に広がり残っているがんに対しては、限界がある治療法です。
  全身病としてのがんに対しては、現在では、化学療法が唯一の科学的にその効果が実証された治療法として認められています。
 医療関係者の間では、免疫療法と言うだけで顔をしかめる人が多いのですが、 その効果が科学的に十分実証がされないまま、進行がん患者さんにとって、生きる望みをつなぐ副作用の少ない治療法として、高額な細胞免疫療法などが広がり、患者さんやその家族の生活を圧迫していることが、大きな反感を買っている理由でもあります。

 丸山ワクチンや蓮見ワクチン、あるいは、養子免疫細胞療法などが非特異的免疫療法であるのに対し、がんワクチン療法は特異的免疫療法として区別されます。
 いろいろな種類のリンパ球を選別せずに増やして免疫を高める方法を非特異的免疫療法、
がん細胞の目印となるような分子を認識してがん細胞をやっつけるリンパ球だけを増やす方法を特異的免疫療法と呼びます。

免疫の基本的仕組みは、自分自身と自分でないものを見極め外敵の侵入を防ぐことです。外敵は攻撃しても、自分自身に対して攻撃が起これば、われわれにとって不都合なことがたくさん起こるため、このような免疫反応が起こらないような仕組みが備わっています。 しかし、最近になって、自分のタンパク質であってもそれを攻撃する細胞(細胞障害性リンパ球=CTL)がわずかながら残っており、これをうまく活用すると、これまで自分自身の細胞と見分けのつかなかったがん細胞も攻撃できることが分かってきました。
がんには、それぞれに特異的なタンパク質が存在しますが、それが細胞内で分解され小さなペプチド断片となり、白血球型が一致すればHLA分子と結合して細胞の表面に浮上します。がん細胞の表面にだけ存在しているこうした目印を人工的に作り出し、これをうまく見つけて反応してくれる細胞障害性リンパ球(CTL)を多く増やして注射してやれば、がんを叩くことが出来るという考え方で、これをペプチドワクチン療法と呼んでいます。
 ワクチン療法で重要なもののひとつは、細胞障害性リンパ球(CTL)で、このうち、主にがん細胞だけに反応するCTLを増やすことを目的としてがんワクチンが利用されるようになってきています。
人工的に合成したがん細胞の目印=ペプチド(9個か10個のアミノ酸をつなげたもの)を用いると、以下のことを科学的に検証することができます。
 (1)ペプチドワクチンに反応して患者さんの血液中で特異的CTLが増えていること、
 (2)CTLががんの組織に浸潤していること、
 (3)ペプチドワクチン治療を受けた患者さんの体内で増えたペプチド特異的CTLが本当にがん細胞を死滅させることができるかどうか

まだ限られた症例数ですが、ワクチンに反応するリンパ球の増えている患者さんは、そうでない患者さんに比して生存期間が延長していることが確認されつつあります。ペプチドワクチン療法ががん治療の一翼を担う治療法としての評価を受けるには、まだまだ不十分ですが、日進月歩で変わりつつあると言えるでしょう。

 注:がんペプチドワクチンの臨床研究をおこなっている施設は次の通りです。
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/nakamura/main/cancer_peptide_vaccine.pdf

2010年1月6日水曜日

がん患者の精子保存

『がん治療によって精子をつくる能力がなくなった後に子どもをつくる可能性を残すため、 治療前に患者の精子を採取し 凍結保存しているのは、全国の大学病院とがんセンターのうち27%にとどまる・・・中略・・・自施設で凍結保存しているのは24の大学病院で、がんセンターはゼロ。』(京都大泌尿器科による調査:共同通信)

前立腺がんの全摘手術の副作用として、尿失禁や性機能障害が語られることは良くありますが、「不妊症(男性)」については、正面から語られることは、我が国ではほとんどありません。
しかし、ACS(アメリカがん協会)などのHPを見ると、前立腺がんの手術の副作用として、「ED」とは別に「不妊症」という独立した項目があります。(「リンパ浮腫」についても、頻度は少ないと書かれてはいますが、これも独立した項目となっています。)
精嚢で作られた精子は精管を通って前立腺内で尿管と合流するわけですが、手術ではこの精管を切断してしまうので、要するに避妊による「パイプカット」と同じことをするわけですね。
したがって、もはや人為的なことをしない限り、自然には子供の父親となることはできないので、子供を望む場合には、精子バンクへの登録について医師と相談するように・・・という説明がきっちり書いてあります。
前立腺がんの場合は、確かに高齢者が多いため、そういう話は今更、という気がしないでもないのですが、そうした希望の多い少ないにかかわらず、(精子バンクの良し悪しも別として)、患者としては、こうした情報も事前にはっきり知っておく必要があると思うのです。
世の中には、五十を超えていても、2~30代の女性と結ばれるといううらやましい人も、少なからず居られるわけですから(笑)
精巣腫瘍となると、若年者が多いため、これはまた非常に切実な問題となってきます。
日本では精子保存なんてどうしているんだろうと思っていたところに、ちょうど前述の記事が目につきました。

米国のHPを見ていると、「患者のための情報」の提供が実に細やかですね。もっとご紹介したいのはやまやまですが、私の語学力では、解読にも時間がかかって、よほど暇じゃないと、そう簡単にはできそうにありません。
医療関係者に奮起してもらいたいところなんですが、こうしたことには皆さん、あまり興味がないようで(^^;;;